腰痛の基礎知識
腰痛は人類の進化の代償
二本の足で立って歩く人類にとって「腰痛」は宿命と言える症状です。
一説には400万年とも言われ人類の直立二足歩行の歴史、
直立二足歩行によって得たものは、
自由に使えるようになった両手、発達した脳と言語です。
これらを得ることによって人類は飛躍的な進化を遂げ
やがては地上を支配するまでになりました。
しかしながら、重い頭部を腰椎で支えるという、
決して理にかなっているはいえないこの姿勢をとり続けることは
進化の代償として「腰痛」という宿命的な症状を人類にもたらしたのです。
厚生労働省が毎年行っている「国民生活基礎調査」では、
病気やけが等で自覚症状のある者(有訴者)のなかで
腰痛をもつ人の割合は常に上位を占めています。
この「国民生活基礎調査」の平成23年度の調査でも、
症状別にみると、男性では「腰痛」での有訴者率が最も高く、
次いで「肩こり」、「鼻がつまる・鼻汁が出る」となっています。
また、女性では「肩こり」が最も高く、
次いで「腰痛」、「手足の関節が痛む」となっています。
長い人生の間で、一度も腰痛を経験しない人はほとんどいないと言っていいでしょう。
歳をとるほど腰痛を訴える人の割合は増え、高齢化が進む中で
この傾向はますます強まっていくと予想されています。
常に大きな負担のかかる「腰」
体のバランスの中心「腰椎」
人類の身体は腰椎が支点となって、前方の上半身の重さを
後方の腰背筋の力でバランスをとっています。
腰から上の上半身の重さは、全体重の約60%を占めています。
そして、腰椎にはその2倍もの力がかかるので、
ただ立っているだけで、腰椎には常に体重の1.2倍の力が加わっていることになります。
これは計算上の数値ですが、
実際に行われた計測では、直立した姿勢で第3腰椎にかかっている力は
その人間の体重と、ほぼ等しいことが証明されています。
無理な姿勢が腰痛の原因
ただ自然に立っているだけで、体重と同じかそれ以上の力が加わっていtる腰椎。
その姿勢をさらに前かがみにした場合は、
上半身の位置が視点である腰椎から遠く離れ
バランスをとるために腰背筋は力を増します。
つまり、45度のお辞儀の姿勢をとった場合には
自然に直立しているときの倍以上の力、
すなわち自身の体重の2倍以上の圧力が腰椎にかかるのです。
さらに、腕を伸ばして身体から離れた位置で荷物を持ち上げた場合、
荷物の重量の実に11倍の圧力が腰椎にかかるという計算になります。
一見軽いと思われる荷物でも、想像以上の負担が腰にはかかっているのです。
腰にかかる負担は腰背筋に力を込めることでバランスをとろうとしますが、
腰背筋の力が弱いとバランスが取れずに腰を痛めることになるのです。